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オイルドジャケットを楽しむ

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冬の防寒には様々なファッションアイテムが存在しますが、その中でもコートやジャケットといったいわゆるアウター(外套)が活躍します。アウターには、例えばダッフルコート、Pコート、トレンチコートなどのフォーマルに合うものや、ダウンジャケット、ウインドブレーカー、フリースなど、よりカジュアルに合うものなど様々なアイテムが販売されています。
そこで今回は、本来アウトドア用に作られたものがトレンドの流れを受けて、タウンユースとして人気が定着したオイルド加工のジャケットについて紹介します。

オイルドジャケットとは

オイルドジャケットとは、一般的には生地の表面に油を塗り込み、表面に光沢や防水性や保温性をもたせた頑丈なジャケットです。価格はどちかというと高額な商品ですが、しっかりした作りによる本物志向のアウターで、正しい着用を心がければ長年楽しむことが出来ます。

オイルドジャケットといえば、英国王室御用達ブランドBarbour(バブアー)が有名ですが、Barbourのホームページではそのルーツは以下のように記されています。

北海の不順な天候の元で働く水夫や漁師、港湾労働者のために、オイルドクロスを提供したのが始まりでした。その革新的なオイルドクロス製の防水ジャケットは耐久性が高く、瞬く間にバブアーの名声を広めていきました。

このように本来のオイルドジャケットはアウトドアの厳しい環境下での使用を想定したジャケットと言えます。つまり、電車や町中などでキレイに着こなすということは想定されていない実用性重視のアイテムです。
しかし現在、トレンドやファッションとしての流れを受け、タウンユースに取り入れられる傾向があります。

ところが、オイルを生地に塗り込むという特殊な加工が施されているうえ特殊な環境下での着用を想定されているが故に、普段着としての着用を望むのであれば、必要な注意や価値観の転換が要求されるユニークなアウターと言えます。


必要な注意

Barbourのホームページから引用すると下記の内容が注意事項として挙げられています。

防水オイルによる処理を施してあるという商品の特性上、ご使用方法によっては他のものに防水オイルが移染する可能性がございますので下記にご留意下さい。

●電車や自動車などの乗り物に乗る場合は着用をお避け下さい。
移染を避ける為、オイルドクロス面が別の素材に触れないように、ジャケットを裏返して丸めておかれることをお勧めします。

●シートや椅子に長時間放置すると移染する可能性があります。
同様に、オイルドクロス面が別の素材に触れないように、ジャケットを裏返して丸めておかれることをお勧めします。

●長時間着用しているとパンツやスカートに移染する可能性があります。

●保管においては、クローゼットのなかで他の衣料に直接密着する状態を避け、通気性のよい布にかぶせて保管して下さい。

港湾労働者の作業着として生まれたオイルドジャケットは、耐久性や防水性など対自然においては非常に機能的といえますが、町中つまり人や自分の所有物や公共物に対しては特段に気を使う必要があるようです。

正しくお手入れしながら変化の味わいを楽しむ

オイルドジャケットは、ズバリ、汚れを落として元の状態に近づけるという意味において、一般的なお洗濯やドライクリーニングが出来ません。
理由は、生地の表面に塗り込んであるオイルという鎧(よろい)が汚れを含む様々な環境から生地を守るという性格を持っているからです。つまり万が一オイルを洗い流してしまえば、オイルドジャケットとしての機能が奪われてしまい、独特の風合いも損なうからです。
言い換えれば、オイルだけを残して汚れを落とすことは物理的に不可能で、汚れを落とすにはオイルごと落とさなければなりません。

しかし、着用を繰り返したり摩擦の影響により、オイルが抜けてしまったり汚れを含んだオイル自体がジャケット全体の見た目を損なったりなどの影響が出始めてきます。これは他のあらゆる製品同様避けられない現象で「経年劣化」と言います。しかしこの経年劣化に対し、お手入れやリプルーフを行いながら変化を楽しむという発想こそが、このジャケットと付き合うことに必要な意識と言えます。

お手入れ法

一般的な衣服は、生地や繊維に入り込んだ汚れを洗濯やクリーニングによって洗い落すことで守りますが、オイルドジャケットはオイルが汚れから生地を守る為、一般的な「汚れを洗い落す」という仕組みではない製品です。また、経年劣化によりどうしても状態が悪くなっていくものです。

しかし、清潔好きな日本人にとっては、衣服を洗わないで着続けるという発想はなかなか持ち難いかと思われます。そこでまず求められるのがお手入れです。

barbourのホームページでは下記のお手入れ法が紹介されています。

防水オイルを洗い流してしまうため、オイルドジャケットは温水や洗剤を使用する従来の方法では洗うことができません。汚れや砂埃をブラシでよく払い落とし、水を含ませたスポンジなどで軽く表面を拭き取って下さい。(お湯は決して使用しないで下さい。)
 温水や洗剤、溶剤や石鹸は絶対に使用しないで下さい。洗濯機の使用はできません。
洗ったりドライクリーニングを行うと防水オイルが抜けてしまいます。
 濡れたジャケットは狭いスペースに置かず、暖かく風通しのよいところに掛けて、自然乾燥させてください。無理に乾かしたり、火に当てることは決してしないで下さい。

ところがこの「お手入れ」を面倒に思い、怠るユーザーは意外に多いようです。
お手入れを通して長年使い込むことで出る味わいを楽しむという"嗜み"が必要と言えます。

リプルーフ

着用の繰り返しなどにより、表面に塗られているオイルは抜けていきます。そこで、ジャケットに専用のオイルを再び塗り入れることにより再びジャケットの防水性や耐久性を甦させる方法がリプルーフと言われる方法です。
リプルーフを行うには、専門技術を要す仕事である為、メーカーや購入店などに問い合わせてみましょう。また、もしクリーニング店などにお願いする場合ではノウハウや経験があるのかを必ず確認しましょう。


意図的なオイル抜き

リプルーフは、抜けたオイルを再び塗り入れる訳ですが、あえてオイルを抜いた状態で楽しむユーザーもいるようです。独特の味や風合いは無くなりますが、一般的な綿のジャケットと変わりない為、着やすさの点ではどちらかといえば優れており、オイルを抜いて着ることを好む人もいるようです。

こだわりの逸品だからこそ、しっかりしたお手入れを!

オイルドジャケットは以上のようにお手入れに手間やコストがかかりますが、そうした積み重ねの結果として、本来製品が持つ特徴や性能が維持されたうえ味や風合いを醸し出していき、いつまでも着続けることが出来ます。これは、ある意味やがて古くなることを前提としたものづくりとして、機能性とデザインが両立した本物志向の製品だから実現出来ることと言えます。
衣服は、いつまでも何十年と着られるといったような思想のもとで製造されていないケースが多いのではないでしょうか。

日本では特に効率性が叫ばれ、使い捨て文化が広く浸透しています。衣服の世界においても、ファストファッションの台頭が示すように安価で気軽にファッションを楽しむことが出来るようになりました。
当然そのような楽しみ方があっても良いですが、衣服への向き合い方としてオイルドジャケットも他のファストファッションと同様の価値観で同様の扱い方を行っていれば、長年楽しむことは難しいかもしれません。

衣服に愛着をもって時間とお金と手間をかけてお手入れをすることで育んだ歴史が衣服自体に宿り、いつまでも長く付き合うことを素晴らしく思える価値観を持つことが大切と言えます。

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