日本人は世界的に「綺麗好き」と言われており、なにかと抗菌・除菌・殺菌・消臭を謳(うた)う商品が、ここ数年増えているように思います。
そのような中、トイレや玄関や部屋のなど空間の臭いだけでなく、衣服などの布にもスプレーを吹きかけるだけでイヤな臭いを消してしまう商品が販売され、その手軽さが人気を得ているようです。ところが、これには大きな落とし穴があるのをご存知ですか?
ここでは、「臭い」と「汚れ」の関係について解説します。
衣服を洗たくする決め手は何ですか?
例えば、「衣服を洗おうか?それとも、まだ洗わなくて良いか?」を判断する時、あなたはどうやって判断しますか?もしかすると、臭いを嗅ぐだけで判断したりしませんか?
洗たくは衣服に付いた汚れを落とす為に行いますが、上記のようなケースでは、その汚れの有無を”臭い”で判断していることになります。つまり「汚れ」が有るか無いかを「臭い」が有るか無いかで判断していると言えます。
消臭・除菌スプレーで洗った気分になっていませんか?
このように人によって「臭い」は、洗たくの判断基準としての影響力が高いと言えるかもしれません。
その原因は、人はおおむね不快感を排除しようとする防衛本能を持つとされ、「イヤな臭い」という不快感を排除する為に、洗たくをするという行動心理が働くのではないでしょうか。
そのような人間の行動心理を突いた商品が、衣服にも使用できる布用消臭・除菌スプレーです。
つまり、スプレーをイヤな臭いを放つ衣服に噴きかけて臭いを消すことで、不快感を排除する。
よって、あたかも「洗たく」したのと同じような効果が働くという心理が働きやすくなります。
しかし、これは重大な錯覚であり誤解なのです。
「臭い成分」と「汚れ成分」は違う
スプレーを吹きかけるだけで臭いが無くなるのは、ユーザーにとっては洗たくの手間が省けて好都合と考える方もいるかもしれません。しかし、「臭い成分」を無くしても「汚れ成分」は残っていることを忘れていませんか?
消臭
消臭スプレーのメカニズムは、臭いの存在である「臭い成分」を化学的に臭いの無い成分に変えてしまったり、臭いより強い香りによってイヤな臭いを感じさせなくさせたりなど、様々な作用によって消臭します。しかし、臭いの本質的な原因といえる「汚れ成分」は残っています。除菌
衣服からイヤな臭いがするのは、大量の「細菌」が増殖しているからです。そこで、細菌の量を減らせば臭いが減るというシンプルな発想のもと考案されたのが、除菌スプレーです。つまり、悪臭を作る細菌を除菌剤によって除菌したり、悪臭を作る細菌を別の菌で分解して増殖を防いだりしています。しかしこれも、臭いの本質的な原因である「汚れ成分」の除去は解決していません。
このように「汚れ成分」は残っている為、消臭・除菌スプレーだけを吹きかけ続ける生活をしていても、汚れは付着しており衛生的にも不潔なままです。つまり、洗たくと同じ効果が得られている訳ではないのです。
多発しているトラブル
昨今何でも便利な世の中になるにつれ、「洗たくの手間を省きたい」という考えや、不況が続く中で「クリーニング代を節約したい」という考えを持つ人が増えている為か、洗たくやクリーニングへの依頼を避け、スプレーで対応している消費者もいるようです。
その結果、スプレーのかけ過ぎが原因で、シミを作ってしまった…なんて相談があるようです。
正しく使おう
消臭・除菌スプレーの噴霧はあくまで臭いを消す方法で、汚れを消す方法ではありません。
またスプレーのし過ぎも別の問題を起こしかねない為、説明書をよく読むなどし、上手に使うことが望まれます。
参考:ファブリーズで洗おうは、フリスクで「歯を磨こう」っていうのと同じこと。